荒野の創作砦

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論説委員会

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事実のつまみ食い

掲載

 自慢気に写真を掲げ「これが〇〇の真実だ」と声高に主張するツイート。それらが情動の赴くまま次々とRTされていきます。

 特に沖縄の基地問題などでこの手の現象が目につきます。ついでに「マスコミが報道しない」という枕詞も定番ですね。

記事の挿絵があります。

 そもそもの写真自体が、悪質な改変を施されたコラ画像であったり、言及している事案とは何の関係もない写真だったりということも多々ありますが、それは論外なので今回は除外します。まあ、実際そういったものがかなりの割合を占めている現状は、それはそれで問題ではありますが。

 とにかく、これらの写真とツイートが正真正銘の事実であった場合に限って話を進めましょう。最も典型的な例をとれば、基地を歓迎する旨の横断幕の写真や、基地を肯定する発言をする人のインタビュー画像が貼られ、これを論拠に「沖縄県民は基地を歓迎している」と、ツイートは断定します。「基地に反対するのは中国人」なんて尾ひれもくっつけて。

 尾ひれのデマはともかく、これらの写真はもちろん「事実」です。しかし、それが証明している命題はいったい何なのでしょうか?

 結論から先に言えば、これらは「基地を歓迎する沖縄県民『が』いる」という命題を確かに証明しています。もっと自然な言い方をすれば「沖縄県民にも基地を歓迎する人はいる」ということでしょう。それ以上でも以下でもありません。どれだけ拡大解釈しても「沖縄県民は基地を歓迎している」という命題とは明らかに異なります。イマドキの言葉を使えば「主語が大きすぎる」とでも申しましょうか。

 もちろん、今述べた話だけでは「沖縄県民は基地を拒絶する」とも言えないわけですが、今回の話の要点はそこではありません。ここで言いたいのは、断片的な物証のつまみ食いで真実を歪めた情報を、感情に任せて安易に拡散する、その責任は決して軽くないということです。

 歴史問題でも似たようなパターンを目にします。あれは自分がまだ高校生のときだったか……「南京大虐殺はなかった」と主張する某漫画家が、マンガの中で明らかに偽物とわかる写真を取り上げて、「これくらいすぐツッコミいれられないとヤバイ」といったようなことを、さももっともらしく主張するシーンがありました。

 確かにそのとおり、その写真は偽物です。それは事実であり、そんなことは誰でもわかる。ですがその事実が示しているのは何でしょうか? 「南京大虐殺の証拠とされる写真の中には偽物がある」ということが言えるだけです。証拠の中に偽物があることを以って事実を無かったことにできるのなら、世の犯罪者は偽の証拠を作ってバラまきさえすれば、罪を逃れられる、それどころか犯罪の事実すらなかったことになってしまいます。これほど無茶苦茶な話はありません。

 言うまでもありませんが、事実が大切であることは当然です。特にフェイクニュースが駆け巡る昨今、事実に裏付けされた真実を、めげずに発信していくことが強く求められています。しかし、事実の扱い方には注意しなければなりません。特に断片的な物証については、それが示しているのは何なのか、よく見定めなければなりません。写真一枚とっても、いつ、どこで、誰が、何を、どういった考えで、どのように行動し、どんな結果をもたらし、それを誰が如何なる意図で撮った写真なのか………… 自分の願望に合致しているからと直情に任せて拡散する前に、検証し考えるべきことは山ほどあるでしょう。

 どんな法則にも例外があり、実験には必ず誤差が存在するように、「〇〇は△△である」というような単純化された命題に対しては、例えどんな内容であっても、それに合致する人、或いは事実を、2つや3つは必ず見つけ出せるでしょう。現実の世界にはとてつもなく多くの人間がいて、数えきれない事実が存在するのですから。

 目移りするような事実の洪水の中からでも、真実を見通すことができる目を養いたいものです。

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